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第11回北海道大学・ソウル大学 ジョイントシンポジウム開催

 第11回北海道大学・ソウル大学 ジョイントシンポジウムが,11月6日(木)から11月8日(土)の3日間にわたり,京王プラザホテル札幌および本学等を会場として開催されました。
 本学とソウル大学は,1997年に大学間交流協定を締結し,これを記念して1998年に第1回合同シンポジウムを札幌で開催して以来,毎年交互に当番校となって合同シンポジウムを開催しており,今回で11回目となりました。
 11月6日に京王プラザホテル札幌にて開催された全体会では,佐伯総長の挨拶,Hasuck Kimソウル大学副学長の特別講演に続いて,基調講演が行われました。基調講演では,「変革期における大学の役割」というテーマを掲げ,本学の林理事・副学長が,日本の大学の法人化の経緯や今後の本学の発展にむけた展望を語り,ソウル大学からはJin-Ho Seo研究部長が,「持続可能な社会」実現に貢献するためのソウル大学の新たな役割について述べました。
 10月に開催された1分科会を含め,今回は理学,医学,工学,地球環境科学,法学,教育学などの分野において計10の分科会が開催され,これまでの研究成果発表や,大学院学生による研究交流セッションなどが行われました。
 今回のシンポジウムには,ソウル大学の教員・学生ほか60名以上が来札し,両大学より延べ400名が全体会・分科会に参加しました。11回目を迎えた本シンポジウムは,両大学の教員のみならず,若手研究者,さらには学生の交流の機会として,本学とソウル大学との交流促進の大きな原動力となっています。今後も,本シンポジウム開催等を通じて,両大学の連携・協力関係が発展することが期待されます。
全体会後の記念集合写真全体会後の記念集合写真
全体会後の記念集合写真
握手する佐伯総長(右)とHasuck Kimソウル大学副学長
握手する佐伯総長(右)とHasuck Kimソウル大学副学長
(学術国際部国際企画課)


分科会報告
○分科会1「知的システムのための先端融合技術に関するワークショップ」
情報科学研究科 教授 金井  理
 本分科会は,情報科学研究科GCOEプログラム「知の創出を支える次世代IT基盤拠点」の支援をいただき,知的システム構築のための融合技術をテーマに,11月7日(金)に開催されました。ソウル大学からは,CAD分野で著名な機械航空工学科Kunwoo Lee教授を含む5名の研究者が,また北大側からはシステム情報科学専攻の教員5名,博士課程学生4名が参加し,CAD/CAM, 3D-Digital Geometry Processing, Image Processing, Field Informatics, Volume Rendering, Bio-inspired Roboticsの各テーマについて,最新の研究成果14件の発表が行われました。
 今回,初めて顔を合わせるメンバーが殆どであったにも関わらず,双方の研究テーマが非常に接近していたこともあり,共同研究の可能性などを含め,夜遅くまで掘り下げた議論が交されました。また前日には,大学院学生向け特別講演として,デジタルヒューマンモデルの基礎研究からビジネス化に至るまでの興味深いプロセスがLee教授から紹介され,講演後も学生が熱心に英語で質問をしていた姿が印象的でした。
 ソウル大学は,ソウルの南,Gwanggyo地区に,情報科学・機械・ナノ・バイオ・環境に関する産学協同研究の新しい研究拠点 AICT (Advanced Institutes of Convergence Technology) を2007年3月に設立し,重点領域の1つとして情報科学と機械工学を融合した知的システム(ITS,ロボット,メカトロニクス,医療システムなど)の開発を進めています。Lee教授は現在その所長でもあることから,今後AICT−北大間での研究者の相互交流を,より具体的・多角的に進めてゆくことを双方が確認し合い,分科会を終えました。


分科会の様子
分科会の様子

○分科会2「知的財産法と情報法の現代的課題」
法学研究科/情報法政策学研究センター 准教授 吉田 広志
 11月7日(金)にホテルポールスター札幌において,標記分科会が行われました。午前中にソウル大学の2名の先生から報告がなされ,午後は本学から3名の報告がなされました。テーマは,いずれも主として情報法や,情報法と著作権法の交錯領域に関する日本・アメリカ・韓国における最先端の研究であって,活発な討論がなされました。たとえば,韓国は日本よりインターネットが発達しておりますが,それに伴い,IPS(インターネットサービスプロバイダー)の責任をどう捉えるかによって,今後のネット社会の発展が左右されます。この問題は,表現の自由やプライバシーの問題と絡み,非常にデリケートな問題です。韓国における議論は,日本におけるIPSのあり方を議論する上で貴重な参考資料となりました。
 法学研究科では,知的財産法を専攻する韓国人の大学院生を過去に2名,現在3名受け入れています。彼らには,今回通訳として活躍してもらいました。また,LEE Nari客員准教授も韓国出身であり,韓国との人材交流は盛んです。今回来日された2名の先生にも,本学にたいへん好感を持っていただけました。この交流を貴重なものとし,今後も発展を継続していけたら幸いであります。

○分科会3「第4回SNU-HU機械工学と宇宙工学シンポジウム」
工学研究科 教授 藤田  修
 工学研究科機械知能工学系専攻では,ソウル大学機械・航空宇宙工学科と,11月7日(金)午前9時30分から工学研究科内機械系会議室(A463室,A5-66室)において分科会を行いました。参加人数は,ソウル大学から15名(教員9名,学生6名),本学機械知能工学科から22名(教員9名,学生13名)でした。
 まず両大学の専攻長から挨拶及び両専攻の状況紹介があった後,午前1件,午後2件のテクニカルセッションを実施しました。各セッションでは,[1]先進複合材料・ナノ技術,[2]宇宙および流体,[3]燃料電池・内燃機関・燃焼について議論を行いました。本シンポジウムでは,教員セッションと並行して,双方の学生が司会進行及び発表を行う学生セッションを設けました。英語による発表であることや両大学学生間の競争意識なども手伝い,適度な緊張感の中で活発な議論が展開されており,参加学生には良い刺激になったと思われます。教員セッションでは,双方の最新の成果が報告され,貴重な情報交換の場になったと思われます。
 シンポジウム終了後は,札幌アスペンホテルにて懇親会を催し親睦を深めました。本シンポジウムは,学生の育成の場として,また将来の共同研究等に向けた環境作りの場としての役割も有り,今後もこのような緊密な関係を発展させて行きたいと思います。
 なお,本シンポジウム実施にあたり,工学研究科国際交流室には予稿集作成等におきまして多大なご支援を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。
参加者による集合写真参加者による集合写真
参加者による集合写真

○分科会4「環境科学シンポジウム」
環境科学院/地球環境科学研究院 教授 吉川 久幸
 11月7日(金)午前9時から17時20分まで本学地球環境科学研究院講堂において,分科会「環境科学シンポジウム」を開催しました。分科会では,先ず岩熊学院長による歓迎挨拶とG-COEプログラム「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」の紹介,ソウル大学Kang-Kun Lee教授よりBK-21の課題とソウル大学の取り組みに関する講演がありました。その後の研究発表では,15〜20分の発表,5分の質疑応答時間を設定し,双方の大学院生が,それぞれの研究テーマを口頭発表しました。ソウル大学からは6名,本学からは10名が口頭発表しましたが,その内容は,地球環境の現状と対策にまでわたっており,広範囲なものでした。学会ではありませんので,双方の教員には,教育的見地からコメントや質問をしていただきました。本分科会では,本学留学生が積極的に応募し,発表しました。発表後の感想を聞きましたが,彼らにとって貴重な機会となったようです。日本人学生も,雰囲気にのまれず,落ち着いて発表していましたが,質問の聞きとりや,答えが分かっているのに上手く英語で表現できない点にもどかしさを感じたようです。本学の発表者は,分科会のコーヒーブレイクや昼食中にソウル大生と熱心に議論していました。分科会の終わりではGuebuem Kim教授,吉川による全体の取りまとめがあり,今後の分科会についても議論し,継続して分科会を開催していくことで一致しました。
地球環境科学研究院前での記念撮影地球環境科学研究院前での記念撮影
地球環境科学研究院前での記念撮影

○分科会5 「イメージング−発光・蛍光プローブ技術の最前線II−」
医学研究科 教授 近江谷 克裕
 本分科会は11月7日(金)午前9時より北キャンパス創成科学研究棟にて開催されました。ソウル大学より生命科学研究科脳科学センターのKyungjin KIM教授を代表とした7名の研究者の方々が,また,本学側は先端生命科学院の金城政孝教授を代表に,電子科学研究所,医学研究科の研究者が参加,およそ40名の研究者が参加したサテライトシンポジウムとなりました。
 先端生命科学研究院五十嵐靖之教授のオープニングレクチャーから始まり10の演題の講演がありました。特に本年度ノーベル化学賞を日本人研究者である下村脩先生がGFP(緑色蛍光タンパク質)の発見により受賞されたことから,蛍光プローブが話題の中心となり,また日本側研究者には個人的にも下村先生と懇意な方もおり,多いに盛り上がった会となりました。
 今回はソウル大学側から大学院生も参加,また,日本側の講演者を若手研究者としたことから若手の交流も実現できました。夜6時から始まったシンポジウムの懇親会は三次会を経た段階では深夜になるほど白熱した交流となりました。なお,本会は東洋紡績,NEBジャパン社,アトー社の協賛を得て実行されました。
懇親会会場での記念撮影 本分科会の主要参加者
懇親会会場での記念撮影 本分科会の主要参加者

○分科会6 「日韓眼科シンポジウム」
大学病院/医学研究科 講師 吉田 和彦
参加者による記念撮影
参加者による記念撮影
 眼科学分野教官,医員が中心となり,ソウル大学眼科より2名の先生をお迎えして11月7日(金)午後2時から医学部第一会議室において標記分科会を行いました。医学系の分科会は2回目の開催です。眼炎症、網膜疾患の話題を中心として他部局からも数多く参加していただき,講演5件(本学3件,ソウル大学2件)の発表が行われました。
 発表後は,熱心な質疑が行われました。日韓双方の教員,学生が英語で積極的に議論をしている姿が印象的でした。
 分科会終了後は,研究室,病院見学を行いました。さらにその後,参加者7人は札幌市内にて夜遅くまで親睦を深めたようです。こうした機会がその後の交流に繋がっていくことを改めて感じました。

○分科会7 「ナノテクノロジー、バイオテクノロジーおよび触媒」
理学研究院 教授 魚崎 浩平
 理学院化学専攻と工学研究科化学系専攻が中心となり,ソウル大学化学科の教員,学生13名を迎えて11月7日(金)に理学部7号館と5号館ロビーにおいて標記分科会を行いました。本分科会は,中国やインドからの参加者も含めた国際ミニシンポジウムとして開催されました。ナノ構造とバイオ分析関連の話題を中心として理学研究院,工学研究科,触媒化学研究センター,電子科学研究所など多くの部局からも数多くの参加があり,講演15件とポスターセッション22件の発表が行われました。
 講演会場は熱気にあふれ,熱心な質疑が行われました。ポスターセッションでは大学院生(本学14件,ソウル大学8件)が発表を行いましたが,日韓双方の学生に英語での口頭発表の機会を与えるため,ショートプレゼンテーションも行いました。その甲斐あってか,ポスター会場で積極的に議論をしている姿が多く見受けられました。
 また,シンポジウム後に懇親会(参加者50人)を開催してお互いの交流を深めました。特に,日韓の学生約20人は,札幌市内にて懇親会後も夜遅くまで親睦を深めたようで,学生にとっては貴重な体験になったと感じています。
 今回の開催では,文部科学省グローバルCOEプログラム「触媒が先導する物質科学イノベーション」と,ソウル大学化学科が受けているBK21の経済的支援を受けました。来年はソウル大学で開催される予定です。
主要参加者の集合写真 ポスターセッションの様子
主要参加者の集合写真 ポスターセッションの様子

○分科会8 「幾何学とトポロジー」
理学研究院 教授 小野  薫
 今回は数学の中でもテーマを「幾何学とトポロジー」に絞り,ソウル大学数学教室から3名の教員,2名の大学院生を迎え11月8日(土)に上記分科会を開催しました。テーマを絞った理由の一つは,より実質的な研究交流を目指したからです。昨年までよりも時間を長くとった主講演4つと大学院生など若手研究者による短めの講演を6つ設定し,参加人数は25名ほどとなりました。
 ソウル大学側からは,4次元異種多様体,複素曲面の構成で4次元トポロジーに大きく貢献している Jongil Park 氏が講演の企画を手伝ってくれました。Park 氏の最近の研究についての主講演の他,Jaehyun Hong 氏と Cheol-Hyun Cho 氏が主講演を行いました。Hong 氏は Hermite 対称空間をモデルにした幾何構造を正則曲線の接分布を用いて把握する彼女が寄与する研究について,また Cho 氏は toric 多様体と呼ばれる多様体での Lagrange 部分多様体の Floer 理論の進展についてサーベイ講演を行いました。本学側からは,今秋まで北大数学教室で日本学術振興会特別研究員であった阿部拓郎氏(現京大助教(グローバルCOE))が多重配置に付随した対数型ベクトル場や微分形式のなす加群についての主講演を行いました。どの講演も興味深く,実質的な研究交流の機会を作るという目的に適ったものでした。
 これらの講演の後に続いた若手研究者による講演も,今後の進展を期待させる良いものとなりました。
 上述の Hong 氏の講演は,我々の教室の山口佳三教授の研究に関わるものであり,またCho 氏の研究は,私が数年来仲間と進めている研究の上に立ったもので,ここ数年お互いの研究に強い関心を持ってきました。若手研究者や大学院生も含めた研究交流を進めるためにもソウル大学とのジョイントシンポジウムは有意義なので,今後とも継続してゆくことを確認して散会となりました。

○分科会9 「大学の国際化」
学術国際部 国際企画課長 野田 昭彦
 このセッションは,ソウル大学と本学の国際交流担当教員・事務職員が大学の国際化にむけた方策について意見交換を行う場として,第8回ソウル大学・北海道大学ジョイントシンポジウムの際に初めて開催されて以来,4回目の開催となります。今回は小早川護副理事・国際交流担当役員補佐(メディア・コミュニケーション研究院教授)がファシリテーターとなり,本学からは本堂武夫理事・副学長,蟹江俊仁国際交流室員(公共政策学連携研究部教授)ほか国際交流に携わる教員および職員が10名ほど参加しました。
 今回の分科会では「学生のモビリティ向上」「国際的な大学コンソーシアム活用」「単位互換制度」をキーワードに,日本・韓国などアジアの大学が,高等教育の国際水準を満たすためにはどのような方策が必要か,ということが論じられました。
 ソウル大学からはHasuck Kim副学長をはじめ,8名が参加し,ソウル大学の国際化に長年携わってきたKyongsoo Lho教授(行政学科)及び国際課長のSean Kim氏が,カリキュラムの国際化について,ソウル大学における現状や今後の目標について発表を行いました。
 また,本学からは蟹江教授が,自ら教鞭をとっている工学分野における「教育の国際化」について発表を行い,日本のトップレベル8大学の学生に対する,留学に関する意識調査(アンケート)の結果から判明した課題及びその解決策について意見を述べました。また,国際企画課長である私が,日本の大学が,海外大学との共同教育プログラムの開発に取組む背景・課題,また今後の展望について発表を行いました。
 今回のセッションでは,特にアジアの大学が共通して直面している,大学教育の国際化の問題に関して,率直かつ有益な情報交換ができたばかりか,今後この問題に取組んでいく上で建設的な意見交換ができ,有意義なセッションとなりました。
ファシリテーターの小早川教授(左)と発表者の蟹江教授 分科会の様子
ファシリテーターの小早川教授(左)と発表者の蟹江教授 分科会の様子

○分科会10 「ソウル大学と北海道大学における教員養成・研修の比較研究」
教育学研究院 准教授 大野 栄三
 教育学研究院は,10月13日にソウル大学のCollege of EducationからJunehee Yoo准教授(物理教育学科)を招き,分科会「ソウル大学と北海道大学における教員養成・研修の比較研究」を開催しました。本学からは教官3名と大学院生3名,日本国内の教員養成系大学・学部の教官5名と大学院生3名,道立理科教育センター1名が参加し,教員養成、現職教員研修について,活発な議論が展開されました。
 本学からは教員免許更新講習を含む実践事例,CoSTEP(北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット)の講義と活動が紹介されました。ソウル大学からは,教員研修に対する保護者と教員の意識調査結果が示され,理科教員養成,研修の教育プログラムについて報告がありました。シンポジウム後の懇親会では,本学とソウル大学との比較にとどまらず,日本と韓国の教員養成のあり方にまで話題は広がり,交流を深めることができました。
 ソウル大学では,中等教育(中学・高校)の教員養成に力を入れて取り組んでおられることがわかりました。北大の教員養成の充実・改善のため,これからも研究交流を続けていきたいと考えています。
 

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