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第12回ソウル大学・北海道大学ジョイントシンポジウム開催

 第12回ソウル大学・北海道大学ジョイントシンポジウムが,11月19日(木)〜11月21日(土),ソウル大学を会場として開催されました。
 本学とソウル大学は,1997年の大学間交流協定締結を記念して1998年に第1回合同シンポジウムを札幌で開催して以来,毎年交互にホスト校となって合同シンポジウムを開催しており,今回で12回目となりました。第6回までは統一テーマのもと,比較的小規模なシンポジウムを開催していましたが,第7回以降は,全体会と複数の分科会という形式での開催となり,世代や研究分野も多様な両大学の研究者が,様々なテーマのもとに,幅広い交流が行う場となりました。
 20日に開催された全体会では,200人ほどの関係者列席のもと,「グリーン成長を目指し共通して取り組むべきこと」をテーマに行われました。Jang−Moo Leeソウル大学総長及び本学佐伯浩総長の開会挨拶に続いて,基調講演として本堂武夫理事・副学長が「持続可能な社会」実現に向けての本学の取組紹介や課題提起を行いました。また,ソウル大学側は,韓国政府の国家科学技術諮問会議委員でもあるJoon Sik Lee機械航空工学部教授が,韓国国内におけるグリーン(環境に負担をかけない)テクノロジー開発の現状と課題について講演を行いました。
 シンポジウム期間中,またはその前後の日程にて,理学,農学,医学,工学,情報科学,地球環境科学,教育学,社会科学などの分野において合計14の分科会が開催され,研究成果発表や,大学院学生による研究交流セッションなどが行われました。
 12回目を迎えた本シンポジウムには,本学からは総勢約100名が参加しました。レベル・規模ともに韓国屈指の大学であるソウル大学との関係を強化すべく,本学は今後もジョイントシンポジウムの開催等を通じて連携を進めていく予定です。

 
Jang−Moo Leeソウル大総長と握手する佐伯浩総長(右) 全体会の様子(壇上は本堂理事・副学長)
Jang−Moo Leeソウル大総長と握手する
佐伯浩総長(右)
全体会の様子(壇上は本堂理事・副学長)
 
(学術国際部国際企画課)
 

 
【分科会報告】
 
○分科会1 「持続可能な社会実現のためのナノ・グリーン化学」
理学研究院 教授 魚崎 浩平
 
 本分科会は11月19日(木),20日(金)の2日間にわたり,ソウル大学の国際会議場にて開催されました。本分科会は,Hasuck Kimソウル大学副学長の開会の辞から始まり,本学からは理学研究院,工学研究科,触媒化学研究センターから計7名の教授が参加して,ソウル大学の教員6名とともに講演を行いました。講演会の合間には,学生のポスターセッションも開催され,本学から参加した14名の大学院生もソウル大学の学生とともに3分間の英語でのショートプレゼンテーションを堂々とこなし,積極的に議論や意見交換に加わっていました。本セッションの基調テーマは,持続可能な社会を実現する新しい物質化学イノベーションの推進でしたが,触媒化学,材料化学から先端分光,エネルギー変換化学から化学工業分野までの最先端の研究成果が次々と発表され,幅広い視野から現在の環境問題を解決する新しいアイディアについて,活発な議論が展開されました。講演会の最後には,私が閉会の辞を述べ,ナノ・グリーン化学の意義と今後の発展について総括するとともに,次年度の化学系ジョイントシンポジウムが北大−ソウル大−南京大との3大学共同開催に拡大され,アジアにまたがるネットワークの形成に向けた更なる発展を遂げることをアナウンスしました。講演会終了後の懇親会においても,本学とソウル大の教員と学生が一団となって,研究・教育について意見交換を行うことができました。今後のさらなる強固かつ緊密な関係の発展が期待されます。
 
参加者の全体写真
参加者の全体写真
 
○分科会2 「気候変動と地球生態圏」
地球環境科学研究院 准教授 石川 守
 
 分科会は,ソウル大学Guebuem Kim教授による歓迎挨拶で始まりました。その後の研究発表では,計15分の発表と質疑応答時間を設定し,双方の大学院生が,それぞれの研究テーマを口頭発表しました。ソウル大学からは4名,本学からは10名が口頭発表しましたが,その内容は,地球環境の現状と対策にまでわたっており,広範囲なものでした。さらに,GCOEの活動として来年度予定されているモンゴルでのサマースクールも紹介されました。学会ではありませんので,双方の教員には教育的見地からコメントや質問をしていただきました。本分科会では,本学留学生が積極的に応募し,発表しました。発表後の感想を聞きましたが,彼らにとって貴重な機会となったようです。日本人学生も,雰囲気に飲まれず,落ち着いて発表していましたが,質問の聞きとりや,答えが分かっているのに上手く英語で表現できない点にもどかしさを感じたようです。本学の発表者は,昼食中にソウル大生と熱心に議論していました。分科会の終わりでは,池田教授による取りまとめと挨拶がなされました。
 
○分科会3 「植物の発生と進化」
理学研究院 教授 山本 興太朗
 
 本分科会は,植物の発生と進化をテーマに,11月19日(木)に開催されました。ソウル大学からは生物科学部のHyung−Taeg Cho准教授を含む4名の教員が,また北海道大学側は理学研究院と先端生命科学研究院,低温科学研究所の教員合計4名が講演を行いました。聴衆は,ソウル大学生物科学部の植物関係研究室の大学院学生や博士研究員で総勢40名程度でした。講演内容は,植物の発生に関わる様々なレベルの遺伝子発現調節機構,プロテアソームによる発生調節機構,植物の幹細胞決定因子,遺伝子と進化の関係等をめぐるもので,話題は広汎に渡りました。しかし,講演者全員,植物の機能を遺伝子や細胞レベルで解明しようとする立場の研究者で,しかも双方未発表のデータを相当示し合ったので,今回,初めて顔を合わせるメンバーであったにも関わらず,シンポジウムの後まで熱のこもった議論が交されました。今回は突然の企画で教員のみの講演に終わりましたが,今後は,双方の大学院生,博士研究員も含めた交流に発展させることができれば一層の成果が期待できると考えています。また,基礎科学が直面している課題が双方の国で驚くほど共通していることを認識したことも成果の1つに数えられるでしょう。
 
講演者(左から,Choe, Lee, Cho, 山口,山本,田中,藤田,Nohの各博士) 講演中のLee博士
講演者(左から,Choe, Lee, Cho, 山口,山本,
田中,藤田,Nohの各博士)
講演中のLee博士
 
○分科会4 「ナノフォトニクス,ナノフォノニクス,ナノテクノロジー」
工学研究科 教授 Oliver B. Wright
 
 本分科会は,光学,音響学,材料科学分野の研究者がナノテクノロジーに関連して集まることを目的としました。ナノテクノロジーは学際的な分野であり,研究の発展のためには様々なナノテクノロジー関連分野の研究者が交流することが重要です。このソウル大学・北海道大学ジョイントシンポジウムは研究者間の交流を促し,さらに2大学間の連携を深める理想的な機会となりました。
 長年の友情により私と共同世話人であるソウル大学の物理・天文学部のDaiSik Kim教授はこの新しい分科会を立ち上げることを決定しました。合計8つの,ナノフォトニクス,ナノフォノニクス,ナノテクノロジー分野の様々なトピックスの発表がありました。そのうち7つはナノフォトニクス分野からで,近接場光学効果,プラズモニクス,THz光放射,フォトニック結晶,レーザー光発生と半導体に関するものでした。このうちの1つの発表はナノフォノニクス分野にも関連し,フォノニック結晶についての話題も含んでいました。さらに、液晶やナノ細線の磁性に関する発表もありました。本学からの発表者は,工学研究科応用物理学専攻と電子科学研究所から4人でした。ソウル大学からは,物理・天文学部の4人が発表しました。発表者に加えて,約15名の学生やポスドクがこの分科会に参加しました。スタッフ,学生,ポスドクによる議論はとても活発なものでした。多方面にわたり有用であるとの観点から,この分科会を今後も北海道大学とソウル大学の両方で続けていくことを決定しました。
 
分科会参加者 参加者一同での食事会
分科会参加者 参加者一同での食事会
 
○分科会5 「第5回機械工学および航空工学に関するソウル大学・北海道大学ジョイントシンポジウム」
工学研究科 教授 佐々木 克彦
 
 本分科会は2005年にソウル大学航空宇宙工学科のW. I. Lee教授と人間機械システムデザイン専攻の成田吉弘教授の企画によりスタートし,本年で5年目となります。例年,機械工学・航空工学全般に渡るさまざまなテーマを含むシンポジウムを開催しており,今回は「Fluid and Thermal Engineering」,「Bio and Nano Technology」,「Structure」,「Robotics」,「Combustion」の5つのセッションがありました。特に,本分科会では,学生間の交流に力を入れており,学生を主体としたシンポジウムも別途平行して開催しました。本学から教員9名,学生6名,ソウル大学からは教員10名,学生7名が講演を行いました。まず,本シンポジウムの準備にご尽力いただいた,S. J. Song教授の司会のもと,ソウル大学側ChairのW. I. Lee教授からソウル大学航空宇宙工学科の現状の紹介,北海道大学側Chairの佐々木から本学工学研究科機械系専攻の紹介を行いました。その後,教員,学生に分かれ,教員側のシンポジウムでは北大側の実質的な団長である藤川教授の流体力学に関わる講演から始まり,今回初参加の大橋教授,山田准教授,本田助教の講演,ソウル大学側からは,H. C. Choi教授,K. Y. Suh教授,W. I. Lee教授の講演などがありました。いずれの話題でも熱心な討論が行われ,予定を1時間近く超過するほどでした。学生側のシンポジウムは,ほとんどの学生が初参加であったためか,はじめは緊張した面持ちでしたが,次第に緊張感も取れ屈託のない意見交換が行われました。最後に本分科会の開催に際して学術国際部国際企画課の皆様に大変お世話になりました。ここに謝意を表します。
 
参加教員の集合写真 学生見学会の様子
参加教員の集合写真 学生見学会の様子
 
○分科会6 「複雑対象・複雑環境の先端的 モデリング・計測技術に関するソウル大−北大GCOE共同ワークショップ」
情報科学研究科 助教 伊達 宏昭
 
 本分科会は,11月20日(金)及び21日(土)の2日間にわたり,ソウル大学とGyeonggi−doが共同で設立した新しい研究拠点AICT(Advanced Institutes of Convergence Technology,Suwon市)にて開催されました。また,本分科会は,情報科学研究科GCOEプログラム「知の創出を支える次世代IT基盤拠点」の支援をいただいての開催となりました。
 ソウル大学からは,CAD分野で世界的に著名な機械航空工学科Kunwoo Lee教授(前AICT所長),船舶海洋工学部のTaewan Kim准教授を含む教員6名とPD研究員・DC学生7名,北大からは,金井理教授を含むシステム情報科学専攻の教員6名,DC・MC学生7名が参加し,合計26件の研究発表が行われました。複雑対象・環境のモデリングと計測技術を主題に,デジタルヒューマンモデル,大規模環境3次元計測データ処理,形状モデリングの理論研究,ロボットビジョン,ロボティクス等について,基礎から実用まで幅広い範囲の最新の研究発表が行われました。昨年の北大での分科会時点からの双方の研究の進捗状況や新しい研究テーマが紹介され,ソウル大側の研究の速さに,参加者一同,大いに刺激を受けました。
 本年度は,教員セッションと並行して,双方の大学院生と研究員のみからなるセッションが独立に設けられ,大学院生の国際的なコニュニケーション力向上の良い機会となりました。親睦会にて,ソウル大学の学生と一緒に盛り上がる北大院生の姿が印象に残りました。
 
参加者による記念写真
参加者による記念写真
 
○分科会7 「電気・情報工学の新展開」
情報科学研究科 教授 本間 利久
 
 分科会の前日19日(木)にはソウル市内の韓国レストランにおいて本学とソウル大学の関係者が集まり,自己紹介や,分科会スケジュール調整,運営方法等の相談を行い,分科会関係者との友好を深めました。分科会は20日(金)10時からソウル大学のShin教授の開会の辞をもって開始しました。講演内容は,現在本学ですすめているJST−JICAプロジェクトのソウル大学との共同研究を軸として,センチネルアジアにおける衛星によるWeb−GIS火災検出システム開発,衛星画像からワイヤレスセンサーネットワークのフィールド実験,RFIDアンテナの2次元電磁界解析,電磁気的トポロジー法による非線形回路解析,雲画像データから渦ダイナミックスの抽出,電力需要側の信頼性のある要求プログラム開発,ソウル大学のアイデアから日本企業の製品開発に成功した交流機器,先端的モータの磁気支持特性解析に関する講演が行われました。途中から佐伯総長と本堂理事も分科会に参加され,最後に,本学の国際交流の今後のあり方について,本堂理事から紹介いただいた後,分科会を予定通りに終了しました。
 
○分科会8 「日本・韓国におけるロシア・スラブ研究の課題」
スラブ研究センター長 岩下 明裕
 
 本分科会は,スラブ研究センターが主催するグローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成:スラブ・ユーラシアと世界」のサポートのもと,11月21日(土)にスラブ研究センター(SRC)とソウル大ロシア研究所(IREEES)共催によるセミナーとして行われました。「日本・韓国におけるロシア−スラブ研究の課題」をテーマに,スラブ研究センターからはグローバルCOEの事業推進者でもある,松里公孝,望月哲男,岩下明裕の3人が報告者として参加しました。
 セミナーは,Park Jongso (パク・ジョンソ)IREEES所長と岩下明裕の挨拶に続き,文学・言語セッションで望月,歴史・社会セッションで松里,政治・国際関係セッションで岩下がそれぞれ登壇し,パワーポイントをもとに臨場感あふれる報告を行いました。IREEES側も,それぞれ言語,歴史,経済の専門家をたて,またSRCの3人の報告に対しては,周到に準備された熱意あるコメントを行い,場を大いに盛り上げました。土曜日ということで参加者は多くはありませんでしたが,その分,議論の応酬に時間を十分とることができ,参加者全員が知的刺激をうけ,新たな着想を得ることのできる催しとなったと確信します。終了後は,カルビを食べ,マッコリを飲み,大いに親交を深めました。
 なお来年も札幌で開催される北大・ソウル大のジョイントシンポジウムの枠組で共催セミナーを分科会として組むことを計画しており,IREEESの主力メンバーが言語・文学研究者であることから,特にこの分野を中心とした企画ができることが期待されています。
 
パク所長の開会挨拶
パク所長の開会挨拶
 
○分科会9 「文化と心の社会性」
社会科学実験研究センター 助教 石井 敬子
 
 本分科会は,特定領域研究「実験社会科学」およびGCOEプログラム「心の社会性に関する教育研究拠点」の支援のもと,11月20日(金)にソウル大学Hoam Convention Centerにおいて開催されました。ソウル大学からは,心理学部長で、文化心理学の分野で著名なIncheol Choi教授とその指導院生4名,本学からは,社会科学実験研究センター長・山岸俊男教授ら教員3名と博士課程の院生2名,そしてソウル大学出身で,今夏まで社会科学実験研究センターにおいて博士研究員を務めていたHyekyung Park氏(Sungshin Women\'s University助教授)が,それぞれ主に文化心理学に関連した最新の研究について発表し,約20名が参加しました。
 本分科会は,両大学において文化心理学に関心のある,特に博士課程の大学院生等の若手研究者が集い,互いの研究を英語で発表し,今後の共同研究の可能性などを含めて議論することを目的としていました。実際,非常に活発とした議論が交わされ,予定していた終了時間をかなりオーバーするほど盛況でした。分科会には,発表者以外にもソウル大学及び延世大学の大学院生が参加していましたが,非常に流暢な英語で,的確な質問・コメントをする姿が印象的でした。またChoi教授からは,特に本センターの指導院生の発表に関して,非常にレベルの高い研究発表でimpressiveであると賛辞をいただき,国際的な場で活躍できる若手研究者の育成を目的とした,これまでの21COE及びGCOEにおける教育研究体制の成果を再認識しました。
 
分科会の様子 参加者記念写真
分科会の様子 参加者記念写真
 
○分科会10 「気候変動の時代の森林政策と炭素市場」
農学研究院 教授 柿澤 宏昭
 
 本分科会は,温暖化対策で注目される森林吸収源をめぐる政策をテーマに11月19日(木)に開催されました。ソウル大学からは教員5名・学生9名,本学からは教員1名が参加したほか,国際的な動向を議論するために,中国・カンボジア・インドネシア・ニュージーランド・カナダからゲストスピーカーを招待しました。
  学部長・山林庁長官の挨拶の後,午前中に各国における森林吸収源にかかわる森林政策の現状について報告があり,既存の森林政策と吸収源対策がどのようにリンクし,政策がどう変化しているのかについて議論を行いました。午後からは吸収源をめぐる国際交渉の現状についての報告,さらに吸収源をめぐる炭素市場・カーボンオフセットの現状についての報告があり,今後の展開方向についての議論を行いました。ポスト京都議定書で森林吸収源の取り扱いが大きな議論になっている中で,時宜にかなったシンポジウムであり,最新の政策動向・政策分析が紹介され実りの多いものでした。
  韓国では現在森林吸収源にかかわる森林政策を検討中であり,ソウル大学に気候変動にかかわる森林研究センターが設置されて国際比較を含めた政策研究が行われています。シンポジウムの後には今後の研究協力をめぐる議論も行い,引き続き情報交換,研究交流を行っていくことを合意しました。
 
学部長からの挨拶 パネルディスカッションの様子
学部長からの挨拶 パネルディスカッションの様子
 
○分科会11 「韓国と日本における自然科学教育の比較研究」
教育学研究院 教授 大野 栄三
 
 本分科会は,ソウル大学のThe Center of Science Education for the Next Societyの主催で11月23日(日)に開催されました。午前の“Session I 理科授業の分析方法についての研究”と,午後の“Session II 教師教育の日韓比較”という2本の柱から構成されています。Session Iでは,教師の発問に着目した授業分析についてソウル大学のJunehee Yoo教授の講演,ベテラン教師と新人教師の授業を比較分析した東京学芸大学の三石初雄教授の講演,言語学の視点から行われた授業分析として,筆者の講演,ソウル大学のChan−Jong Kim教授とSeung−Ho Maeng研究員の講演が行われました。このセッションは,科研費補助金(代表:三石教授)によるYoo教授と私たちとのこれまでの研究交流の成果を踏まえて企画されました。Session IIでは,まず韓国の教師教育の現状と将来構想について,Youngdal Cho教育学部長の講演(Heui−Baik Kim教授と共著)が行われました。続いて日本から,北海道教育大学の田中実教授が教職大学院について,本学教育学研究院の梅津徹郎教授が学部段階の教師教育について講演しました。6年制教員養成という日本でホットな話題も議論され,日韓の教師教育についてさまざまな角度から意見交換できました。最後の討論で,来年度の分科会に向けてのトピック案がいくつか出され,今後詰めていくことに決まりました。
 
分科会終了後の主要メンバー集合写真 プロシーディングス表紙
分科会終了後の主要メンバー集合写真
 
 
  プロシーディングス表紙
 
○分科会12 「第4回日韓眼科シンポジウム」
医学研究科 特任教授 大野 重昭
 
 本年の日韓眼科シンポジウムは特に炎症性眼疾患にテーマを絞り,11月19日(木)にソウル大学のHoam Faculty House・Dongbaek Hallで行われました。本学からは炎症眼科学講座の大野重昭が代表として出席しました。すでにこれまで相互の学術交流が度々行われているため,今回も和気藹々の雰囲気の中で,眼科学の基礎研究,眼科臨床研究,あるいは最新の眼科手術治療について,大変熱心な討論が交わされました。
 ソウル大学医学科側からは3題,そして北大側からも3題の講演が行われ、約30名の出席者から多くの質問やコメントが述べられました。特に韓国側からはしっかりした眼炎症学の動物実験データが発表され,同様の研究を行っているわれわれにも非常に参考になりました。北大側から発表された3題の演題のうち,韓国ではサルコイドーシスによるぶどう膜炎が少ない点で日本とは異なるため,その診断や治療の議論がなされました。また,北大眼科オリジナルの最新の緑内障手術については大きな反響があり,多数の質問が寄せられました。
 来年は再び北大側の開催当番ですので,医学研究科眼科学分野の石田晋教授と炎症眼科学講座が協力し,視覚研究,失明予防に向けた有意義な日韓眼科セミナーを北海道で開催したいと考えております。
 
「第4回日韓眼科シンポジウム」の会場風景
「第4回日韓眼科シンポジウム」の会場風景
 
○分科会13 「大学での学習の質をいかにして上げるか:北大とソウル大の経験から」
高等教育機能開発総合センター 教授 細川 敏幸
 
 分科会「大学での学習の質をいかにして上げるか」は11月19日(木)の午前10時よりソウル大学教育学習センター(CTL)3階の会議室301にて行いました。本テーマの分科会は今回が初めてです。ソウル大学CTLセンターから4名,本学の高等教育センターから6名(安藤,西森,山岸,細川,山田,斎藤),ソウル市内の他大学から3名の参加がありました。
 CTLのリム・キョンフンセンター長が会合の趣旨などを述べた後,細川が本学の最近の教育制度改革について述べました。全学教育の2006年度の制度改革(GPA制度,CAP制,成績評価のガイドラインなど)と教育の質保証につての話題,ならびに学生と教員を対象にしたアンケート調査の結果についての報告です。アウトカム評価のためのアンケート調査と,GPA制度に伴う成績評価のインフレーションに参加者の興味が集まりました。昼食後は,イ・ソユン教授がCTLの活動について報告されました。CTLは教育支援部,学習支援部,e−ラーニング支援部,アカデミック・ライティング部からなり,教員や学生への支援を行っています。e−ラーニング支援部は20名を超える職員を擁し小さなテレビ局並みの設備を備えており,その施設を会合の後見学しました。元テレビ局職員を雇用し,優秀な教員の講義風景を撮影編集したDVDを頒布しているのは驚きでした。また,アカデミック・ライティング部も見学し,その活動の詳細とともに,相談に来ていた学生の感想も聴取しました。概して評判は良いようでした。日本同様,論理的な韓国語の書き方は重要です。また,英語で講義をする教員のための支援もあり,興味深く伺いました。その後は分科会の懇親会を開き親睦を深めました。
 今後も教育改革に関して,本学とソウル大学でより充実した交流が進展し,互いのセンターの活動が高められていくものと期待しています。
 
分科会の様子
分科会の様子
 
○分科会14「大学の国際化」
学術国際部 国際企画課長 野田 昭彦
 
 この分科会は,ソウル大学と本学の国際交流担当教員・事務職員が大学の国際化にむけた方策について意見交換を行う場として,第8回のジョイントシンポジウムの際に初めて開催されて以来,5回目の開催となります。本学からは本堂武夫理事・副学長(国際交流担当)をはじめ,モデレーターとして蟹江俊仁国際交流室役員補佐(工学研究科教授),また国際交流に携わる教員及び職員約10名が参加しました。
 今回の分科会では「Mapping internationalization」と題し,大学の国際化にむけて,どのように計画(Map)していくべきかを議論しました。
 ソウル大学からはHiwon Yoon国際部長がソウル大学の国際化の長期目標について発表したほか,Sunju Parkプログラム・マネージャーが学生交流の現状を説明しました。
 本学からは,はじめに高井哲彦国際交流室員(経済学研究科准教授)が発表を行い,「留学生30万人計画」などの国の方針を踏まえた本学の様々な取組やその実行にあたり乗り越えるべき課題について説明しました。また,佐駐煌久子国際企画課プログラム・コーディネーターが「英語の授業に関するFD」という本学の新たな試みについて発表しました。
 「Vision Plan 2025」という国際化にかかる長期目標を掲げ,その実現に向けて外国人教員の増員などに積極的に取り組んでいるソウル大学の姿勢に大きな刺激を受ける一方で,両大学に共通する課題を認識することができるなど,今回の分科会は本学参加者にとって非常に有意義なものとなりました。両大学の国際化発展にむけて,ソウル大学との協力関係を今後さらに深めていきたいと考えております。
 
高井准教授の発表 参加者全員による記念撮影
高井准教授の発表 参加者全員による記念撮影
 

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