【19日(日)まで】北大で伐採された木々の記憶を残す作品たちー「札幌の木、北海道の椅子展'21-'22」

科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP) 特任講師 朴 炫貞

<写真>科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)の特任講師 朴 炫貞(パク ヒョンジョン)さん。ギャラリー創の前で(撮影:広報課 広報?渉外担当 齋藤麻衣)

跨道橋の撤去工事のため伐採された札幌研究林の木々で制作した椅子の作品展が、6月4日(土)から6月19日(日)、「ギャラリー創(南9西6)」で開催されています。また札幌研究林の温室「アノオンシツ(北8西11)」では、研究者とクリエイターのトーク映像や、椅子の材料となった木材の写真などが展示されています。

1972年、札幌オリンピックに向けて石山通が延伸されたことにより、札幌キャンパスの一部が分断されました。そこで、分断された札幌研究林の実験苗畑と札幌キャンパスとをつなぐために跨道橋が設置されました。202110月、およそ50年にわたって学生や教職員たちの行き来を支えてきたこの跨道橋は、老朽化のため撤去されることになります。その際、撤去工事で大型のクレーンが作業するスペースを確保するために、研究林にあったおよそ320本の木々が伐採されたのです。

札幌研究林(実験苗畑)と札幌キャンパスをつないでいた跨道橋の撤去工事の様子 札幌研究林の実験苗畑と札幌キャンパスをつないでいた跨道橋の撤去工事の様子

アノハシの記憶を作品に

科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)の特任講師 朴 炫貞(パク ヒョンジョン)さんは、地元のクリエイターたちと連携し、札幌研究林にある温室をフィールドとした「アノオンシツ」というアートプロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトの中で朴さんは、跨道橋のことを「アノハシ」と呼び、伐採された木々の記憶を様々な展示やトークイベント、映像作品として残そうとしています。

[椅子と、森と] 研究者とクリエイターによる12のトークシリーズ

札幌の木、北海道の椅子展'21-'22

ギャラリー創で開催された札幌の木、北海道の椅子展'21-'22 ギャラリー創で開催された札幌の木、北海道の椅子展'21-'22

跨道橋の撤去工事のために伐採された木を有効活用しようと、北海道の木工家?デザイナー11組が、樹齢100年をこえるイチョウや、アカナラを材料として、オリジナルの椅子をつくりました。「ギャラリー創」では、ハイチェアや揺れる椅子、クマの形をした椅子など、個性あふれる様々な椅子に実際に座ってみることができる作品展が開かれています。

札幌の木、北海道の椅子展'21-'22
http://sou.agson.jp/cgi-bin/whats_new/whatsnew_details.cgi?num=246

  • HU-01(制作:THREEK)HU-01(制作:THREEK)
  • LIM Chair with Arm(制作:北の住まい設計者)LIM Chair with Arm(制作:北の住まい設計者)

ギャラリー創 ディレクターの本庄千晶さんは、「作品に座って、ゆっくりじっくりと展示を見ながら過ごしてもらえるのは、椅子展ならでは。北大キャンパスにあるイチョウは多くの札幌市民にとって馴染みのあるものですので、北大のイチョウでつくった家具ということにも価値があります」と話しました。

ギャラリー創 ディレクターの本庄千晶さん(左)と朴 炫貞さん(右) ギャラリー創 ディレクターの本庄千晶さん(左)と朴 炫貞さん(右)

椅子と森と言葉と

サテライト会場となった「アノオンシツ」では、様々な分野の研究者と椅子を制作した作家による12のトーク映像と、そのトークから紡ぎ出された言葉、写真家 柿本拓哉さんによる椅子の材料となった木々の写真が展示されています。加えて、屋外では、伐採された木がもともと生えてあった場所を巡ることもできます。

写真家 柿本拓哉さんによる椅子の材料となった木々の写真 写真家 柿本拓哉さんによる椅子の材料となった木々の写真
研究者と椅子の作家たちのトークから紡ぎ出された言葉たち 研究者と椅子の作家たちのトークから紡ぎ出された言葉たち

北方生物圏フィールド科学センターの広報を担当する林忠一さんは、「研究者とクリエイターとのトークの中から、また新たな表現手法のアイディアが生まれてきて、とてもワクワクしました。次の展開につなげたいですね」と話しました。

来場者に展示解説する北方生物圏フィールド科学センターの林忠一さん(撮影:広報課 広報?渉外担当 齋藤麻衣) 来場者に展示解説する北方生物圏フィールド科学センターの林忠一さん(撮影:広報課 広報?渉外担当 齋藤麻衣)
伐採した木が生えていた風景や、今後再生する森を想像できるように、もともと木が生えていた場所に木のディスクが配置されている(写真はイチョウの伐採跡地)伐採した木が生えていた風景や、今後再生する森を想像できるように、もともと木が生えていた場所に木のディスクが配置されている(写真はイチョウの伐採跡地)

北海道大学とクリエイターたちをつなぐ架け橋となり、自らも作品制作に取り組んだ朴さんは、「アノオンシツでは、ギャラリー創とはまた違った形での物語の伝え方を体験して欲しいと思っています。2つの会場を巡ることでもっと理解が深まり、また巡りたくなる展示となるよう心掛けました。」と語りました。

展示と映像制作に取り組んだ朴 炫貞さん(撮影:広報課 広報?渉外担当 齋藤麻衣) アノオンシツでの展示と映像制作に取り組んだ朴 炫貞さん(撮影:広報課 広報?渉外担当 齋藤麻衣)

今回、研究者を紹介する映像と、クリエイターの紹介映像とともに、12のトークシリーズを企画?制作したという朴さん。「展示では、トークの言葉の一部を活字として見せていますが、映像では皆さんが興味を持ったところから、少しずつご覧いただき、様々な視点から森を感じていただけたら嬉しいです」と言います。

トークシリーズはこちらから(外部YouTubeリンク)
https://www.youtube.com/channel/UCrGjg95qpwF0WNtzcglkfFw

今後も、地域のクリエイターや、様々な分野の研究者たちとの連携で、札幌キャンパスの自然を新たな表現で伝えていきたいと話す朴さん。これからの展開にも期待が高まります。


跨道橋の思い出

2020年11月、多岐にわたるジャンルのパフォーマンスを様々な場所で展開する「さっぽろボーダレス ライブアーツ キャラバン」の一環として実施された「ライブアートツアー」で、跨道橋が撤去される前の札幌研究林が、紹介されています(7:25頃~)。そのほかにも札幌キャンパスの見どころが満載ですので、合わせてぜひご覧ください。

札幌の秘められた歴史遺産を巡るライブアートツアー "Live Art Tours around the hidden historical heritage in Sapporo"

跨道橋を渡ってアノオンシツへ 跨道橋を渡ってアノオンシツへ
  • クラーク博士が馬術部の皆さんと馬に乗って登場?!クラーク博士が馬術部の皆さんと馬に乗って登場?!
  • 圧巻のライブパフォーマンス)圧巻のライブパフォーマンス

【創成研究機構/広報課 学術国際広報担当 川本 真奈美】

■札幌の木、北海道の椅子展'21-'22

主催:Sapporo Association of Woodworkers(SAW)
共催:北海道大学CoSTEP
協力:北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
助成:札幌文化芸術振興助成金交付事業(公益財団法人札幌市芸術文化財団)
   公益財団法人 道銀文化財団 道銀芸術文化助成事業
後援:北海道、札幌市、北海道新聞社
協賛:株式会社アサヒ、株式会社小鍛冶組、株式会社竹中工務店、
   学校法人東海大学、株式会社登心、有限会社フジワラ、株式会社吉山塗料店
URL :
(ギャラリー創ウェブサイト)http://sou.agson.jp/cgi-bin/whats_new/whatsnew_details.cgi?num=246
(アノオンシツウェブサイト)http://anogreenhouse.com/?p=106


■椅子と、森と、言葉と

主催:アノオンシツ( 北海道大学CoSTEP + 北方生物圏フィールド科学センター)
協力:Sapporo Association of Woodworkers(SAW)
URL :http://anogreenhouse.com/?p=106
*本プロジェクトは科学研究費助成事業(課題番号:21K02940)の助成、2021年度KNIT共同研究助成により制作されました。

出展作家、参加研究者などの情報はこちらに詳しく掲載されています。
https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/event/24423

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■札幌の秘められた歴史遺産を巡るライブアートツアー
"Live Art Tours around the hidden historical heritage in Sapporo"

主催:文化庁、公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会、札幌演劇シーズン実行委員会、
   札幌市?豊平館(指定管理者:一般財団法人北海道歴史文化財団)
共催:北海道大学
後援:北海道
協力:北海道大学馬術部/あるた出版(株) /秋山不動産(有) /狸小路商店街振興組合/
   札幌駅前通まちづくり(株) /すすきのゼロ番地飲食業協同組合/薄野市場振興会/
   札幌市こども人形劇場こぐま座/きょうど料理「杉ノ目」札樽観光(株)
URL :https://s-e-season.com/SBLAC/program/lat/